哲学ブログ

 同一性~意識の特徴~

「幸せな人生の秘訣とは、変化を喜んで受け入れる事」・・・ジェームズ・スチュワート

「変われないのではない、変わらないという決断を自分でしているだけである」・・・アルフレッド・アドラー

 アイデンティティ(Identity)とは、その個人やそのグループにおける普遍性、同一性等を指す言葉である。私の中では「~らしさ」という言葉がしっくりくる。人間は個人を特定するために、その人がその人である同一性を持たせて、その人だと判断する。名前が分かりやすい例である。名前は、そのあまり変化のない同一性により、その個人を特定する。

 人間は名前以外にも、その個人個人の性格や印象にある種の同一性を持たせて、その個人を判断する。ただ、その場合は個人を特定するためというより、個人がどんな人物かを意識付けすることに使われる。そして、その意識付けされる内容がアイデンティティになっていると私自身は考えている。

 この同一性の概念は、「意識の特徴の1つ」である。人間に限らず、すべてのものは変化し続けている。しかし、意識は変化していく中でもそのものを「同じもの」として認識するようにできている。例えば、昔の自分と今の自分では、体の細胞や思考能力、見た目も変わっているが、「同じ自分」として認識する。

 家族や友人、頻繁に会う人など、お互いに年を取って変化していても、特に年を取ったなど感じないのも、意識の持つ同一性という特徴だと思う。ただ、その意識の特徴である「同一性」を否定しているわけではない。

 「万物は流転す」・・・プロタゴラス

 この言葉の内容は普遍的であり、まさしく世の中の「真理」である。しかし、昨日の自分と今日の自分が違う自分と意識したり、知人が少し違ったくらいで「違う人」と認識してしまうと、生きることに不都合が生じる。だからこそ変化していても意識は同一性をもたらすものだと思う。

 しかし、同一性ばかり意識していると変化に対して気付きにくくなったり、変化自体を不都合なものと認識してしまう等の盲点が生じる。

 どういうことかというと、新しい変化に抵抗が生じたり、徐々に変化しているのに気づかず、積み重なったことにより大きくなってからやっと気付くことや、同じ人間の意見が変わった時に、意見の内容は考えず「以前と言ってることが違う!」と腹を立ててしまうようなことが生じる。

 例えば、職場では新しい事をしようとすると大抵の人は反対する。変化を嫌がるのだ。色恋沙汰では少しのすれ違いから大きなすれ違いになり修復できない関係になる事は珍しくない。自分の意見が間違っていたと考え、違う意見を言うと「前と言っていることが違うじゃないか!」と怒る人は多い。

 言い換えれば、意識の特徴である「同一性」は変化を嫌い、変化を気付きにくくし、変化を責めることに繋がるという事でもある。その同一性は自然的に人間に備わっているものだと思う。だからこそ変える事は難しい。

 しかし、生きるために備わっている特徴でもあるため、変える必要はない。ただ、必要に応じて変化を受け入れる考慮が必要であるという事だ。動物の中でも人間ほど生活の変化が著しいものはいない。自然的に備わっている「同一性」が必要であれば、人間の世界で生きるための人工的に備える「変化性」もまた必要なものである。

 同一性と違うところは、同一性は自然的に備わっている意識の特徴の一つであるが、変化性は「どう変化していくか?」、「どう変化した方がより良くなるのか?」、「そもそも変化するべきなのか?」等と考慮が必要なところであり、「変化性」は備えていかなければいけないという点である。故に人工的な特徴とも言える。

 同一性のみの概念しかもっていないと、変化するものに対応が出来なくなる。しかし、変化性は個人個人の環境や教養により、良くも悪くもなる。どちらもバランスが必要であり、そう考えていくと、人間は「自然と人工」の産物だと思える。

 変化は世の常である。その変化に対応しながら、必要であれば自分自身の同一性を疑い、必要であればその同一性に従うべきかもしれない。

 自然的に備わっている「同一性」のみに従うのではなく、自分自身の人工的な「変化性」も取り入れ、双方のバランスをとることも、下らない人生を面白くする1つの考慮材料になると思う。

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yu-sinkai

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