「変化に対応する能力を高めるには、「自分は誰なのか、何を大切にしているのか」を明確に意識することである」・・・スティーブン・R・コヴィー
「人生をやり直すことに、遅すぎるという事は無い」、「やり直せない人生は無い」等の言葉はよく耳にするが、「やり直す」という言葉を聞く際に、すべてゼロに戻して、1からスタートするという概念の人が多いと感じる。しかし、人生においてやり直すということは、人生の一部を変化させることだと私は考えている。もちろん「心機一転」という気持ちは分かるし、例えば転職をする際に、変化というよりは、1からやり直しという感覚の方が強いとも思う。
職業を変える際には、同じ職種であれ職場が変われば、その職場のルールや雰囲気、人間関係等もすべての事を1から学ぶこととなる。だからこそ、職場を変えることにハードルを高く感じ、不満を持ちながらも同じ職場で継続して働く人がいる。特に年を取るとそういう傾向は強くなる。
私自身も、職場や職種を何度か変えてきたから、新しく1から仕事を覚える大変さや、新たな人間関係の構築の大変さ、1からの勉強の大変さは理解しているつもりである。ただ、私は仕事を変え、やり直しても、基本的に目的は変わらないので、やり直すという感覚より、やり方を変えるという感覚の方が強かった。
私が働く目的、価値観は、「役に立つ」という事である。もちろんお金を稼ぐというのは当たり前の前提条件である。お金を稼ぐにしろ、自分の価値観である「役に立つ」という事の手段とし、その仕事をすることである。
例えば、私は以前は老人福祉施設で「調理師」として働いていた。仕事内容としてはお客様に美味しい食事を召し上がっていただくことだが、目的は、ざっくり言えば、調理を通してその法人、スタッフ、お客様の役に立つことだと考えていた。また、現在は「社会福祉士」として相談業務をしており、仕事内容としてはお客さの悩みを聞き改善することであるが、これも同様、「役に立つ」が目的である。「役に立つ」という手法が、「調理」から「相談」に変わっただけである。もちろん内容は全然違がうが。
要するに、「やり直す」ということは、大本の目的は変わらず、手法が変わるだけという話である。そして、1からスタートと言うよりは、人生に変化があったという事だと私は考えている。
例えば、色恋沙汰で言えば、「幸せになりたい」という目的があり、その目的で異性と付き合い、別れ、別の異性とも付き合う。別の異性と付き合う時には、ある意味恋愛のやり直しではあるが、「幸せになりたい」という目的は変わらず、その手法として、別の異性と付き合う事の選択である。
仕事に関しても、「お金を稼ぐ」だけが目的であれば、転職はただの手段であり、学ぶことは1からかもしれないが、目的が変わらない以上、人生自体の「生き方」が変わるわけではない。もちろん環境変化はあるが。
そして、今まで培ってきた人生がある以上、その人生を継続させながらの変化が「やり直し」だと私は考えている。過去は現在までの継続でありゼロにはできない。自分が培ってきた人生を土台に変化するのであれば、人それぞれのスタート地点は違う。やり直しが1からか10からかは、人それぞれである。人生は変化の連続だと言っていも過言ではない。だからこそ、何度でも変化ができ、言い換えれば、何度でもやり直しが出来る。良くも悪くもだが。
ただ、年を取ったから、自分には能力がないから、大変だから等の理由で、やり直し、言い換えれば、変化をしない事は、人生をつまらなくする思想である。自分の目的のために変化できる人生の方が、些か下らなくも面白いと思う。