哲学ブログ

欲と毒~相関~

 「多くを欲する者はつねに多くの物を必要とする」・・・ホメロース

「真の欲求無くして真の満足はない」・・・ヴォルテール

「人間は欲がてあしについたものぞかし」・・・井原西鶴

 欲というカテゴリーは一概には言えず数多にある。人間の3代欲求である食・睡眠・性から始まり、所有や怠惰、承認などから、夢や希望、悪意や善意等も含まれる。ある種、人間はどのような行動をとろうともその目的を満たすための根本は、欲であると言っても過言ではない。ただ、その欲が自己と他己等のベクトルが違うだけである。

 ただ、よく自体が悪いということではない。その欲のベクトルがどう向くかで、変わってくる。例えば、ボランティアなどは、「人を助けたい」という欲があり、そのベクトルは自己ではなく他己に向けられている。根底的には他己に向けられる善意による自己満足かもしれないが、結果的には人のためになる。

 また、科学の発展、言い換えれば人類の進化の1つは、他の動物より欲が深かったためである。生きるためだけでは満足できず、「どう生きるべきか?」、「生きるとはどういうことか?」等とまで考えるようになり、哲学は生まれた。常に生きるか死ぬか世界では哲学は生まれないと思う。

 欲があるから、人間は他の動物より抜きんでて、ある意味「地上の王」というような存在なった。ただ、欲が満たされない時は、基本的に苦しむようにもなり、欲が満たされないとそれは毒になる。もちろん、欲が満たされなければ「まあいいや!」と思えればそれに越したことがない。

 しかし、「まあいいや!」と思える人はあまりいないように思う。だからこそ人間は迷い、自分を責めてしまうのではないかとも考える。例えば大学受験に落ちた時は、大抵の人間は自分を責める。恋人と別れるときも自分を駄目な人間と思う人もいる。仕事で失敗があると自分のふがいなさを感じる。・・・ETC

 言い換えれば、自分の欲を満たせない反動である。そこで、たちが悪いのは他人のせいにしてしまうことである。ただ、欲が満たせないことは毒になるが、その毒はまた薬ともなり得る。

「私は失敗したことがない。ただ、一万通りのうまくいかない方法を見つけただけだ。」・・・トーマス・エジソン

 欲が満たされなければ、自己嫌悪や他己嫌悪等の毒になる。欲と毒は相関関係にあるといっていい。ただ、その欲が毒になる過程や結果を見直し、修正すれば、その毒はある意味人生の薬となる。その欲からくる毒をその先に薬と変えられる思考を持つと、人生はまた面白くなると思う。

 受験に例えると、受験に受かりたいと思う欲が、受験に落ちたことで毒になるが、それが転じ勉強しなおすという思考を生む薬となる可能性がある。色恋沙汰でも、異性と一緒にいたいという欲から、別れることになり一時は自分を責める毒になるが、その結果、異性に好かれるように自分を磨こうという薬になる可能性もある。

 人生において欲は毒を生む。しかし毒は薬となる可能性がある。であれば、毒を薬と変えられる思考をもつことは、下らないかもしれないが、人生を面白く生きられる1つの思考である。

マズローの5段階欲求。
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